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神戸地方裁判所 昭和57年(ワ)1253号 判決

原告

甲野太郎

右訴訟代理人弁護士

佐伯雄三

被告

右代表者法務大臣

鈴木省吾

右指定代理人

田中治

外六名

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し金二五一一万八四二三円及びこれに対する昭和五五年一一月二二日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  本件事故の発生

原告は昭和五四年七月から神戸刑務所に服役し、同刑務所第五工場においてアルミバリ取り、ボール盤、普通旋盤作業に就業し、昭和五五年一一月二一日からは自動旋盤機(単能一号機、以下本件機械という)を操作し、フランジ(管と管とを結合する継手)の端面と角面を切削する作業、具体的には、油圧ハンドルを操作調節して油圧チャック(以下チャックという)にフランジをセットし、手元スイッチを入れて電動主軸を回転させることにより、右電動主軸と一体化されたフランジを回転させ、フランジの端面と角面の切削を自動的に行なう作業(以下本作業という)に従事していたところ、同月二二日午前一一時頃、本件機械のスイッチを切つて、受刑者吉留修一(以下吉留という)と本件機械を点検中、本件機械が急に作動し、原告はその左腕を本件機械にまきこまれ、同時に顎も本件機械に接触させた(以下本件事故という)。

2  被告の責任

(一) 被告は、受刑者を刑務作業に就かせるにあたつては、受制者の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮議務、安全保護義務)を負う。

(二) ところで、本件機械が急に作動した原因は、服部刑務官の許可を得て本件機械を調整していた吉留が手元スイッチの起動ボタン(以下単に手元スイッチという)に触れたためである。

すなわち、本件機械の付近には、当時、吉留と原告の二人しかいなかつたが、手元スイッチを作動させていないのに本件機械が作動したと断定するのは証拠上難しいところからして、両名のいずれかが本件機械の手元スイッチに触れたとみざるをえない。

しかしながら、原告が故意に手元スイッチを押すことはありえない。

また、原告は、手元スイッチを原告の右斜め前方、本件機械本体の反対側に遠ざけたうえ、フランジの下部を右手で支え、左手をフランジの上部に添えてフランジを本件機械のチャックに入れようとしていたのであるから、原告の体の一部が手元スイッチに触れるような姿勢でもない。しかも、そのフランジは、一旦チャックに入れたものであるから、無理をしてチャックに入れる必要はなく、いずれにしろ、原告が誤つて手元スイッチに触れることもありえない。

従つて、手元スイッチに触れたのは吉留の外にはなく、吉留において、フランジを原告がチャックに固定したものと思い誤り、故意に手元スイッチを入れたか、或いは、シリンダーを点検中に体の一部が手元スイッチに触れたものと考えられる。

(三) またかりに、原告の体の一部が誤まつて手元スイッチに触れたために本件事故が発生したものだとしても、本件機械に以下に述べる安全装置が具備されていれば本件事故は起りえなかつた。

すなわち、本件機械の手元スイッチには安全カバーがつけられていなかつた。もしこれがつけられていれば、原告も誤つて体の一部を手元スイッチに触れることはなかつた。さらに、フランジをチャックに固定するに際しては、チャックをおおうカバーを左方に寄せるが、そのカバーが左方にある限り、手元スイッチを押しても本件機械が作動しないような安全装置も備わつていなかつた。もしこれがつけられていれば、原告の体が手元スイッチに触れたとしても、本件事故は起らなかつた。

さらに被告は、原告を本件機械作業に就業させるにつき原告に対し、作業内容や本件機械を安全に作動させるための注意事項等につき説明を怠つていた。もし被告がその説明を十分にしていれば、原告が誤つて手元スイッチに触れることもなかつたから、本件事故は起らなかつた。

(四) いずれにしろ、本件事故は、被告が、以上のような安全配慮義務を履行しなかつたために発生したものであるから、被告はこれによつて被むつた原告の損害を、国家賠償法一条、二条、もしくは民法七〇九条により賠償する責任がある。

3  原告の負傷の程度等

(一) 原告は、本件事故により次の傷害を負うた。

(1) 左前腕開放性骨折(橈骨及び尺骨)

(2) 左肩部、上口唇、下顎部裂創

(3) 下顎骨々折(正中骨体部及び右関節突起)

(4) 歯牙脱落(右上側切歯、第二小臼歯右下中切歯、側切歯)

(5) 左手部挫創

(二) 原告の右傷害の治療経過は、次のとおりである。

(1) 昭和五五年一一月二二日から同年一二月九日まで神戸刑務所内病棟で入院治療

筋縫合及び各裂創の縫合、左上肢のギブス固定

(2) 同年一二月九日から同月一九日まで神戸博愛病院へ入院

下顎骨々体部骨折の観血的接合術

左前腕骨々折の観血的骨接合術を施行

(3) 同年一二月一九日から昭和五六年四月三〇日まで神戸刑務所内病棟へ入院

(4) 昭和五六年五月一日から同年一〇月一九日まで所内普通監房収容

(5) 同年一〇月一九日から同月二〇日まで神戸博愛病院へ入院

左橈骨々折の固定に使用したキルシュナー鋼線と左尺骨々折の固定に使用した螺子と金属副子の除去術を施行

(6) 同年一〇月二〇日から同月三〇日まで所内病棟へ入院

(7) 同年一〇月三〇日から同年一二月一三日(刑期終了)まで所内普通監房

(8) 同年一二月一三日から現在まで神戸博愛病院へ通院治療(昭和五七年六月三日現在実治療日数一三日)

(三) 原告の後遺障害は、次のとおりである。

(1) 左肘関節、左手関節の運動制限

(2) 左肘関節の痛み、左手指のしびれ

(3) 咀嚼障害

(4) 四歯歯科補綴

右後遺障害は、少くとも労働基準法施行規則障害等級表の第一〇級に相当する。

4  原告の損害

(一) 傷害による慰籍料 金一七〇万円

(二) 後遺症による慰籍料 金三九〇万円

(三) 後遺症による逸失利益

原告の後遺障害は、少くとも労働基準法施行規則障害等級表の第一〇級に該当するので、原告は右後遺障害により労働能力喪失率二七パーセントの労働能力を失つた。

原告は、症状がほぼ固定したとみられる昭和五七年二月三日当時満三二才の男子で、以後三五年間は就労可能であり、賃金センサス(昭和五五年)第一巻第一表の産業計・企業規模計・学歴計の男子年令階級別(三〇才ないし三四才)、平均賃金年間三、三七七、八〇〇円を基礎に、ホフマン式計算(係数一九・九一七)により中間利息を控除して計算すると次のとおりとなり、右は原告の得べかりし利益の現価である。

三、三七七、八〇〇円×〇・二七×一九・九一七=一八、一六四、四二三円

(四) 弁護士費用

原告は、原告訴訟代理人に対し、本件訴訟の提起及び追行を委任し、弁護士費用を支払う旨約定し、このうち金二〇〇万円は本件刑務災害と相当因果関係にある損害と認められるべきである。

5 損害の填補

原告は、被告から手当金として金六四六、〇〇〇円の支払を受けた。

6 結論

よつて、原告は被告に対し、前記4の損害金合計二五、七六四、四二三円から前記5の填補額金六四六、〇〇〇円を控除した残額金二五、一一八、四二三円とこれに対する昭和五五年一一月二二日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否等

1  請求原因1は認める。

2  同2のうち、(一)は認めるが、その余は争う。

3  同3のうち、(一)及び(二)の(1)ないし(7)は認め、その余は不知。

4  同4は争う。

5  同5は認める。

6  被告の主張

(一) 本件事故は、吉留のシリンダー調整中の位置とその視界、シリンダーのダイヤルと手元スイッチの位置及び高さとの関係からみて、吉留の体の一部が手元スイッチに触れたとは到底考えられない。

(二) 本件事故は、原告が手元スイッチに触れたために発生したものである。

すなわち、原告は、フランジの下部を左手で支え、右手をフランジの上部に添えてフランジをチャックに入れようとしていたところ、フランジがチャックに入りにくかつたため、無理に力をいれた際、原告の体の一部が手元スイッチに触れたものである。

原告としては、チャックに入りにくいフランジは、無理にチャックに入れようとするべきでなかつたし、また、無理な姿勢をとるときには、手元スイッチを遠くに離しておくべきであつた。

(三) 本件事故は、それまでの原告の作業態度、本件機械の作動状況、当時の周囲の状況等からみて、全く予態外の出来事であつたから、被告においてこれを予測できず、従つて、原告主張のような安全装置を設置すべき義務はないし、また、被告は原告に対する安全教育も十分に行なつており、本件事故のような予想外の事故を想定して安全教育をなすべき義務はない。

三  抗弁

かりに被告に何らかの過失があつたとしても、本件事故はもつぱら原告の過失に起因するものであるから、大幅に過失相殺すべきである。

四  抗弁に対する認否

争う。

第三  証拠〈省略〉

理由

(以下の理由中で引用する証拠の成立等については次のとおりである。〈省略〉)

一請求原因1(本件事故の発生)の事実は当事者間に争いがない。

二請求原因2(被告の責任)について判断する。

1  被告は、受刑者の改善、矯正教育の一環として受刑者を刑務作業に就かせているのであつて、受刑者に就業させるにあたつては、その作業中の事故防止につき、企画、指導及び実施の全般にわたつて適切な指導監督をするとともに、その具体的な作業内容に応じて、通常予想しうる事故の発生を未然に防止するに足る措置を講ずべき義務を負うことは明らかである。

2  〈証拠〉によれば、次の(一)ないし(八)の事実を認めることができる。

(一)  神戸刑務所では、受刑者の新入時に「作業安全心得」という小冊子を貸与し、これを基本にして、新入時だけでなく、配役時、職種変更時等に安全教育をする外、日々の就業前にも安全唱和をさせる等の安全教育を実施して、受刑者に「作業安全心得」の内容を熟知徹底させるようにしており、原告に対しても同様であつた。

(二)  「作業安全心得」は一一〇頁余りの小冊子であつて、共通的安全心得と専門作業別安全心得とから成り、前者の中には、「安全教育を熱心に、まじめに受け、規則や心得は必ず守ること」、「危険を感じたり、無理と思つたときは押し通さないこと」、「スイッチを入れる前に、危険の有無を確かめること」、「仕事のやり方、機械や工具の使い方は、教えられたとおりに守ること」、「スイッチを入れるときは、それによつて動く機械の周りの安全を確かめ、合図、連絡、確認をしてからスイッチを入れること」などの基本的注意事項の記載がある。

(三)  原告は、自動旋盤機によるフランジ加工作業に就労するまでは、二箇月近く普通旋盤機によるフランジ加工作業に就労していたが、同じ旋盤作業でも、自動旋盤作業の方が普通旋盤作業より操作が簡単であるうえ、普通旋盤作業ではフランジが飛んだりして危険であるが、自動旋盤作業ではそのようなこともなかつたため、原告はかねてより自動旋盤作業に就業することを希望していたところ、自動旋盤作業部門に欠員が生じ、原告の普通旋盤技術も良好であつたため、昭和五五年一一月二一日の午後から自動旋盤作業に就労することになつた。

なお、第五工場の正担当である服部刑務官は、原告が普通旋盤作業に就労する際、原告に対し、「作業安全心得」中の「旋盤作業心得」部分を覚えさせるなどしたほか、日頃、同作業に就労中の原告を含む受刑者に対し、チャックに入りにくいフランジは、無理にチャックに入れないで、はねておくよう指導していた。

(四)  服部刑務官は、原告が自動旋盤作業に変る際、「作業安全心得」中の「旋盤作業心得」部分についてはすでに十分指導していたためこれを省き、原告に対し、自動旋盤機は操作が簡単だから、気をゆるめたら怪我をする旨注意し、本件機械につき簡単な説明を加えたうえ、本件機械の操作方法等につき、検査工(受刑者の中から選ばれた製品検査係)である中村浄美及び自動旋盤作業に熟練していた受刑者の吉留に指導説明させた。

吉留は原告に対し、約一五分間にわたり、本件機械の操作方法、すなわち、手元スイッチの位置とその操作、フランジの持ち方及びセット方法、チャックの開閉操作や油圧シリンダーの調製方法などを教え、自らも実際に本件機械を操作して見せ、チャックにセットしにくいフランジはこれを除けるなどし、さらに原告にも本件機械でフランジを切削させ、原告が本件機械の操作方法及び手順を覚え込んだのを確認した。その際吉留は、原告に対し、危険が生じたら直ちに手元スイッチを押して本件機械を停止させること、フランジがチャックに入りにくいときには無理にこれを入れずに除けておくこと、などを注意した。

なお、手元スイッチ部分は遊動式になつていて、簡単に動かすことができるから、これを手元に近ずけることも、手元から遠ざけることも可能であつたが、吉留は、それまで、手元スイッチを、本件機械のほぼ真正面、作業位置から軽く手をのばせば触れる、前方やや右斜めあたりに近ずけたままこれをほとんど動かさずに作業をしており、その方が作業を円滑に行うことができたため、原告に対しても、手元スイッチをその位置に定めたまま指導し、手元スイッチ部分が遊動式になつていることまでは特に説明はしなかつたが、手元スイッチは腰より高い位置にあるため、手元スイッチが右の位置にあつたとしても、故意に触れる場合は別として、普通に作業をしている限り、誤つて上肢が手元スイッチに触れることはない。

(五)  本件機械のチャックにフランジをセットするには、フランジの大きさや重量などからして両手を使い、右手でフランジを支え持ち、フランジの上部に左手を添えて行うものであり、吉留もそのように原告に教えたのであつて、もし、これを逆にして、左手でフランジを支え持ち、フランジの上部に右手を添えてチャックにセットしようとした場合は、相当無理な姿勢をとらざるをえず、チャックにセットするのが困難になり、作業を円滑に行うことができない。

(六)  その後、原告は、吉留に教えられた通りの仕方で作業を続け、翌二二日も、就業前の安全唱和を行つた後、午前七時五〇分頃から本件作業を始めたが、午前九時頃から約九〇分余り医務室で胃の診察を受け、その後、再び本件作業に就いたが、そのうちフランジを切削する刃の送りが遅くなり、フランジの面がうまく切削できなくなつたので、前日吉留に教えられた通り、油圧シリンダーを調整してみたがうまく調整できず、吉留にその調整を頼んだ。

(七)  そこで吉留は、服部刑務官の許可を得て原告のところへ行き、フランジの面を見たところ、本件機械の刃の送りが速くなりすぎていることが分つたので、油圧シリンダーを調整したが、なお刃の送りが速すぎたので、再度油圧シリンダーを調整し直した。

原告はその間、十分に切削できなかつたフランジを再度チャックに入れようとしていたが、そのフランジは、最初のセット時にもセットしにくかつたので、これを吉留に教わつた仕方とは逆に、フランジの下部を左手で支え持ち、フランジの上部に右手を添えて、無理にフランジをチャックに押しこもうとした。

(八)  この時点においては、原告は、吉留から教わつてはいなかつたものの、前日からの作業経験上、手元スイッチが遊動式であることは知悉しており、その作業中は手元スイッチを本件機械のほぼ真正面に近ずけていたが、本件事故時には、原告の体が手元スイッチに触れるおそれがあつたので、手元スイッチの位置を、本件機械の本体からやや右方に遠ざけていたものの、それが不十分であつたため、原告が無理にフランジをチャックに押しこもうとして姿勢が不安定になつた際、原告の右上肢が本件機械の手元スイッチを押してしまい、本件機械が作動した。

原告は、油圧シリンダーを自分で調整したことはない、本件フランジは一度はチャックにセットできたのであるから、チャックに入りにくかつたことはない、フランジは無理に押しこむ必要もなかつたから手元スイッチに触れることもありえない旨供述しているが、原告は、本件事故後の昭和五五年一二月八日に、神戸刑務所の看守長に対しては右認定事実のとおり供述しているのであつて、その供述内容に不自然なところはなく、吉留の同看守長に対する供述調書(乙第一一号証)と対比しても、その供述内容に相当の差異があり、吉留の供述内容に無理に合わせた形跡はない。それゆえ、原告の神戸刑務所の看守長に対する供述調書(乙第一〇号証)は十分信用できるものと考えられる。

また、原告は、手元スイッチが遊動式であることは知らなかつた旨供述しているが、吉留がこれを原告に教えていなかつたことは前示のとおりであるにしても、手元スイッチは容易に動くものであり、原告は、前日からの手元スイッチの度重なる操作中にこれを知るに至つたものと推認され、しかも原告が検証における指示説明の際、「手元スイッチは、当時作業台に立つていた原告の右斜め前方、本件自動旋盤機の反対側に遠ざけていたので、原告の上肢が手元スイッチに接触する可能性は全くない。」旨説明しているところよりしても、原告の右供述はたやすく措信できないところである。

上記認定事実に反する乙第一一号証、証人吉留修一の証言、及び原告本人尋問の結果の各一部はたやすく措信できず、他にこれを覆すに足る証拠はない。

3  そうだとすれば、本件事故の原因は、原告が、電動機械の持つ本来的な危険性を軽視し、教わつた通りに作業をせず、被告のなした安全教育の内容も真剣に受けとめず、敢えてチャックに入りにくいフランジを無理に入れようとし、その際、原告の体が手元スイッチに触れるおそれがあることを知りながら、若干これを体から遠ざけはしたものの、依然として体の近くに置いたままにしていたことによるのであつて、原告がかかる行為にでることは、通常予測できないところである。

被告は、前示2の(一)、(二)の如く、刑務作業における安全教育の一環として、常日頃、スイッチの重要性、危険性について受刑者の関心を高めんと努力しており、本件のような異常な事態まで想定して安全教育をなすべき義務はないから、被告に安全教育義務違反はないというべきである。

また、原告の主張するような安全装置が本件機械に具備されていれば、本件のような事故は起らなかつたとはいえるけれども、被告が、かかる異常な事態を予測し、その結果生ずる事故を回避するための安全措置を備えるべき義務を負つているものとは到底考えられない。

もつとも、証人服部純治、同吉留修一、同田井靖夫の証言によれば、被告は、本件事故後、本件機械の手元スイッチに安全カバーを取りつけたことが認められるが、これは本件と同種の事故の再発防止を目的とした改善措置と解されるから、かかる措置がとられたからといつて、被告に安全カバーの設置義務があつたものと推認することはできない。

従つて、被告に安全配慮義務の違反はない。

三よつて、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官広岡 保 裁判官寺田幸雄 裁判官倉澤千巖)

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